人狼への転生、魔王の副官 原作:漂月 漫画:寺田イサザ デザイン原案:西E田 掲載:コミックアース・スター 期間:2016- 巻数:既刊2巻 評価:★★★★☆ Amazonで詳細を見る |
『人狼への転生、魔王の副官』は、漂月による異世界転生ファンタジー小説の寺田イサザによるコミカライズ。
魔王軍副師団長の人狼を主人公とし、人間と共存を目指す魔族と人間との戦いを描く、壮大な戦記ファンタジー物語。
あらすじ
始動編
ミラルディアは、北方の北壁山脈、東方の風紋砂漠、南方の南静海、西方の樹海に囲まれた、人間達による17都市から成る都市国家であった。しかし今、ミラルディアは樹海に軍を構える魔王軍と交戦状態にあった。
人狼である魔王軍第三師団の副官ヴァイトは、人狼56人と犬人200人を率い、交易都市リューンハイト近くの森の中にあった。ヴァイトはリューンハイトの攻略を命じられていたのだ。
それに対し、工業都市トゥバーンからの100人の救援部隊もリューンハイトの道程にあり、魔王軍の接近に気づいていた。
しかしのトゥバーン部隊は、自陣周囲に張った罠、そして人間と異なり個々の武に重きを置く魔王軍を甘く見ており、奇襲をかけられても撃退できると油断していた。
しかしその安心は、地面を転がる自兵の首によって破られる。魔王軍は罠をかいくぐり奇襲してきたのだ。
それからの戦いは、蹂躙というべきものとなった。奇襲を仕掛けた人狼56人は、一兵も欠けることなく僅かな捕虜を残してトゥバーンの部隊を殲滅したのだった…。
リューンハイトでは、太守である男装の麗人・アイリアの下、来る魔王軍に向けて、防衛戦の準備が進められていた。
アイリアは、解放されたトゥバーン兵の報告から、油断できない相手であると断じていた。しかし、リューンハイトは街壁に守られた都市であり、補給が必要不可欠である攻城戦ではリューンハイトが有利に戦を進められる。武力という圧倒的な個々の力を持つ魔族ではあったが、戦争という集団戦においては、知を蓄えることを知る人間に分がある。アイリアはそう思っていたのだ。
しかしながら、ヴァイトに対してそれは当て嵌まらなかった。ヴァイトは人間というもの、そして戦争というものを熟知していた。
なぜなら、ヴァイトは前世であった人間、それも様々な戦争を経験し、科学の発達した現代の地球における人間の知識を有していたのだ…。
ヴァイトを含めた人狼隊は、人間に变化しリューンハイト街壁内部に人員を配置していた。
人に化けた魔族を判別する魔法具は存在していたが、人と人狼という両形態を持つ人狼は、人間に対する隠密行動に適任だったのだ。
そして夜半、リューンハイトへの奇襲の合図がヴァイトによって放たれた。人間には理解できない人狼の咆哮が、都市全域に散らばった人狼全てに届く。
リューンハイトは、すぐに混乱状態に陥った。街壁を超えられないはずの魔王軍が都市内部の至る所に出現したのだ。
知らせを受けた太守公邸のアイリアは、公邸内の人員を退避させ、市民の安全を図ろうと命令を下す。
しかしそのとき、公邸の窓を破りアイリアの前に現れた人狼があった。ヴァイトであった。
そして、市民の命を引き換えにアイリアに降伏を要求する。その要求を前にアイリアは受諾するしかなかった。自身の名誉と引き換えに…。
感想
戦争に統治、策謀に計略、ファンタジー世界で繰り広げられる戦記物語の全ての旨味を余すことなく含んだ、堂々たる原作小説のコミカライズであって、つまらない筈がない。転生ものでもあるので、ファンタジー世界の事物が科学的思考によって論理的に分類される場面が多々あり、そういった所で説明されるファンタジー世界のシステム自体もまた面白い。
コミカライズとしては、説明不足も多々あり、作画があまり緻密でないという不満があるものの、原作が良いため面白いのは変わらない。
小説版
人狼への転生、魔王の副官 作者:漂月 イラスト:西E田 出版:アース・スター エンターテイメント Amazonで詳細を見る |