地球の放課後 吉富昭仁 作

地球の放課後
作者:吉富昭仁
掲載:チャンピオンRED
期間:2009-2012
巻数:全6巻
評価:★★★★☆
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吉富昭仁作の『地球の放課後』は、チャンピオンREDで2009年から2012年まで連載していたSF漫画。全6巻。【ウィキペディア:地球の放課後

高校生の正史、早苗、八重子、小学生の杏南4人以外の人類が消え去った地球を舞台に、穏やかで優しい日常が描写される。そして正史への信頼から生じた早苗と八重子の透明感のある恋心と、彼らが生活する現実的でありながら幻想的な世界は、どこまでも美しい。

そのような日常の中で、人類が何故消えてしまったのか、何故この4人だけが残ったのか、その伏線が少しづつ張られていく。

その伏線はきれいに回収され、ほどよい納得感と共に、4人の絆を感じられる結末を迎える。

もうこの4人の穏やかな日常が見られないのかと寂しい気持ちにさえなるが、4人の穏やかな行く末が想像され、心地よく本を置くことができる、そんな美少女SF漫画である。


あらすじ

4人だけになってしまった地球。物語は人々が消えてから1年を経た4人の日常描写から始まる。

正史は、畑を耕し、鶏を育て、様々な方法で人の消えた町から日常物資を調達しながら、皆の生活を支えていた。

4人が出会ってからちょうど一年がたったある日、ゆったりとした朝ご飯を済ました4人は記念日を祝おうと、パーティーグッズを調達しに街に向かう。

その車中、八重子は冗談交じりに
このままいくと、美少女3人のおっぱいは、確実にキミのものだ!
人類滅亡を、避けるためには、致し方あるまい
と正史に。しかし正史は
消えた人達はみんな、きっと帰ってくる…
・・・中略・・・
だから変な心配、しなくていいよ
と穏やかに返す。

街では、女3人はコスプレをしてはしゃぎ、正史は医学書や農業書を調達。そして寝床にしている空き家に戻り、道路にテーブルを出してディナーと、いつもとは少し違った特別な時を過ごす。

そんな穏やかな生活ながら、ふと彼らは消えてしまった近しい人間のことを思い悲しみ、お互いが消えてしまわないかという不安を感じながら日々を過ごしていく。



ある時は4人は海に行き、正史は網で魚を捕り、女3人は水着で体を焼きながら正史の話をしてふざけ合う。

静かな電器店に行けばビデオカメラでお互いを撮りあったり、ビルの屋上で派手に花火をしてみたり。

しかし時に4人は、人類が消えた原因であるファントムに出会ってしまう。それは黒いスライムの様な形状をしていて、手が生えたり足が生えたりと自由自在にその形を変える。そして人間をその体に取り込んで消してしまう。

そんなときも、正史は自身が囮になり皆を救う。

またある時、正史と早苗はタイムスリップする。そこは過去の早苗の家で、早苗は死んだはずのおばあちゃんに、正史は小さい頃の早苗に出会う。すぐに現実に戻った2人だったが、
僕は…、小さな女の子に、会ったよ
と言う正史に、早苗は小さい頃に出会った青年のことを思い出して言う、
その子が、なんて言ったか…
当てて、あげようか?
と…。

以下はネタバレ注意。


地球に残された4人の共通点

地球上の人類が4人だけになってから2年が経った頃、簡単な漢字さえも読めない杏南に危機感を持った早苗が、青空教室を開く。

有名な数学少年だった正史は、数学教師として皆に数学を教えるが、そこで自分を含めた4人の特異性に気づく。それは、早苗、八重子、杏南の3人全てが著しい才能を見せたのだ。

それは、この4人が残ったことに意味があり、それを操作している者がいると正史が気づくのに時間はかからなかった…。


人類の滅亡と時間転送装置としてのファントム

それからしばらくして、正史以外の3人はファントムに飲み込まれ消える。そして、たった一人になった正史の前に、未来から来たという正史が現れ、全ての謎が明らかにされる。

それは、これから無数の隕石が地球へと落下し、多くの人命が失われ、やがて人類は滅亡に至ること。ファントムは、正史が作った転送装置であり、飲み込まれた人間は無事未来に転送されていること。

そして、ファントムが送られたことにより世界線は分岐した、つまり隕石によって滅亡に至る未来と、ファントムによって未来に転送された人間たちが生きる未来は別の宇宙になってしまうことだ。

そして、正史を含めた4人が最後まで残された理由として、4人がファントムを開発した研究者であることが伝えられる。それは、この時期に2年も教育から離れてはファントムは開発できない、つまり救われた世界でファントムが開発されないようにするためだったのだ。


物語の終わり

そして、正史もまたファントムに飲み込まれる。

未来の地球は隕石の衝突により、復興の途上にあったが、ファントムに転送させられた皆が協力し、共に暮らしていた。

そして、早苗、八重子、杏南は、正史が来ると信じて、待っていたのであった…。
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