マイルノビッチ 佐藤ざくり作

マイルノビッチ
作者:佐藤ざくり
掲載:マーガレット
期間:2011-2014
巻数:全12巻
評価:★★★☆☆
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佐藤ざくり作の『マイルノビッチ』は、マーガレットにて2011年から2014年まで連載していたラブコメディ。全12巻。

毒キノコとあだ名されるドブスだった主人公が美しさのカリスマ的人物に助けられ、変身し可愛くなり恋を重ねていくというパターンの物語。


導入

もっさりと重そうな髪にどでかいメガネをした女子高生・木下まいる。まいるはネガティブで自分に自信がなくて、学校ではいつも一人だった。そんなまいるに付けられたアダ名は「毒キノコ」だった。

家の中でもまいるは不幸だった。両親とは別居しているために、家事のいっさいをしなくてはならなかったし、そしてなにより暴君の兄・あいるに虐げられていた。

そんなある日、まいるは熊田天佑に話しかけられる。天佑は、文化祭のミスターコンで一番に選ばれるほどの高校の有名人だった。しかしまいるは、
話しかけてもらっちゃって申し訳ないです!!
と、自分を卑下するばかりだった。

次の日、まいるが下駄箱を開けると、そこには知らない人からの呼び出しの手紙。指定の体育館裏に行ったまいるは、そこに爽やかな男子高生を見つける。
何?私この人にシメられるの?
と考えながら距離をおいて立つまいるに、彼は告白する。
つきあって下さい!!

まったく信用できず、内臓でも売られるのかと思ったまいるだったが、マジメなところがいいと言う彼に、まいるはうれしくなる。

そして、
友達からなら…
と伝え、メアドを交換しようと言う彼に近づいたその時、まいるは穴の中にいた。

それは深い落とし穴だった。そしてまいるの上方では、おごるとか何とか言っている男たちの会話が聞こえていた。

穴の中で少し呆然としたあと、涙がこぼれ、まいるは思う。
わかってたじゃん
こんなブス誰も好きになるわけないって
そして、まいるは叫ぶ。
なんで、いつも…っ、私ばっかり!!
私が何したってゆーんだよ!!
ブスなのは私のせいじゃないじゃん!!

その時、天佑が現れ、まいるに言う。
ブスをいいわけに使うな
文句ならキレイになる努力をしてから言え
それにまいるはこたえる。
私…っ、生まれ変わる!!

次の日、髪型を変えメイクしたまいるに毒キノコという者はいなかった。そして学校の廊下を歩くまいるは、男たちの視線を感じながら心に決めていた。
おまえら男を弄んでやる
と…。

以下はネタバレ注意。


あらすじ

イケてる女子高生になったまいるは、まいるを罠にかけた男子高生へ復讐する。まいるは彼を呼び出し、へりくだった態度で偶然を装い水をかける。そして乾かしますよとパンツを奪い、パンツを校内の見せしめにしたのだ。

してやったりと喜ぶものの、天佑に「ねーの?、キレイになってやりたいこと」と言われて、まいるは悩む。

そんなまいるに、幼なじみの男子高生・香月未来から知らされる。未来のクラスメイトにまいるのメアドを教えたと。

男とのメールのやりとり、それはまいるにとって初めての経験だった。そしてメールとはいえ、男からの甘い言葉にまいるは舞い上がる。

そして次の日、まいるはその男に会う。しかしその「成功した福笑いみたいな顔」の男・山下のことは全然好きになれなかった。

しかし、可愛くなっても卑屈なまいるは、好きになってもらえることはこれからないかもしれないと思い、付き合うことに了承する。

しかし、付き合った理由を聞いたまいるに対し、「元ブスだから」と答えた山下に嫌悪感を感じすぐに別れる。

そんなまいるにとっての初めてのお付き合い。それは1分25秒だった。

その後、まいるは初めての合コンで工藤成太郎という他校の男子高生と出会う。健全で爽やかな成太郎にまいるは惹かれ、一緒に合コンを抜ける。

嘘をついて誤解させたりと問題にぶつかったものの、やがて互いに好きになり、付き合うこととなる。

それは、まいるにできた初めての好きな人だった。嫉妬されたり、嫉妬したり、別れそうになったりしたものの、二人の関係は続いた。

しかしまいるは、成太郎が他の女とキスしている場面に出くわしてしまう。成太郎のそれは、会えない日が続いてしまったゆえの、出来心のようなものだったが、もはやまいるに成太郎との付き合いを続けることは不可能だった。

まいるの初めての恋は破れた。そしてまいるは毒キノコに戻る。

しかし、友人の言葉とまいるが経験した幸せだった時は、再びまいるを奮い立たせることとなる。
また恋がしたい
全身がしびれるくらいの

そして、目一杯おしゃれして男が来るのを待ち構えるものの、色々しでかしているまいるに声をかける者は同校にはいなかった。

そこでまいるはSNSを始める。そしてそこで七瀬雅樹に出会う。SNSでの出会いだったので、初めての顔合わせのときは天佑と一緒だった。

雅樹は社会人、そしてイケメンだった。保護者のようにふるまう天佑も軽くかわし、まいるに「お付き合いして下さい!!」と言わせる。雅樹は、男女のやり取りに慣れた大人なの男だったのだ。そして二人は付き合うこととなる。

しかし、その別れはすぐに来る。まいるは気づいてしまったのだ。雅樹にとって自分は、遊び相手の女の子でしかなく、同じ人間として扱われていないことに。

まいるは悩む。どんな人だったらうまくいくのかと。悩んだ末に出した答えは、「絶対にこの人じゃないとダメだって思える人。」だった。

そしてまいるは未来と付き合う。幼なじみとして10年もの付き合いがある未来は、まさに自分の求めた人だと…。

よく見知った未来との付き合いは、順調にいくかと思えた。しかし成太郎との偶然の出会いが、これを壊すこととなる。

まいるは未来と、クラブで開催されるファッションショーへと出かける。しかしそこに、成太郎がバイトとして来ていたのだ。

成太郎と会ってしまったまいるは、引き戻される。あの成太郎を大好きだった頃に。そしてまいるは、成太郎のことを全く忘れられていない自分に気付く。

それは成太郎にとっても同じだった。そして、まいるを求めてまいるの学校まで来た成太郎に唇を奪われる。それは半ば無理やりであったが、まいるもそれを受け入れてしまったのだった。

そしてまいるは未来と別れる。しかし成太郎とも、もはや付き合うことは不可能だった。

それからのまいるは、自然体だった。恋を無理やり探すのはもうやめていた。

しかし、天佑との友達としての付き合いは続いていた。そして、まいるの心にあった天佑への尊敬の念や親しみが恋心になるのに時間はかからなかった。そして、まいるは天佑を好きになる。

しかし天佑に好きな人がいることも知っていた。それは、自分の心をむき出しにして相手に伝えることのできる大人の女だった。まいるは二人を見守るしかできなかった。

まいるの天佑への気持ちは、次第に大きくなっていった。そしてそれは思わぬ瞬間に、こぼれてしまう。しかし天佑にとって、まいるはそういう存在ではなかった。まいるは振られたのだ。

しかし様々な偶然や出来事の巡り合わせが、まいると天佑を近づけることとなり、物語は第円団を迎える…。


感想

コメディ要素の強いラブコメとして始まった本作は、卑屈でアホなまいるの面白さが際立っていた。

可愛く変身したまいるの、恋へのギラギラした感じはおもしろかったし、それでいながら純粋なまいるは微笑ましかった。

しかし後半では、まいるは完全に恋する普通の女子になってしまい、よくある少女漫画の恋愛物に陥ってしまった。

また、実は妹思いなまいるの兄・あいるの言動は個性的でいいキャラクターだったのに、普通のラブストーリーに押し流されて、出番もほとんどなくなってしまったのが惜しまれる。
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