幽★遊★白書 富樫義博作

幽★遊★白書
作者:富樫義博
掲載:週刊少年ジャンプ
期間:1990-1994
巻数:全19巻
評価:★★★★★
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富樫義博作の『幽遊白書』は、1990年から1994年まで週刊少年ジャンプに連載されていたオカルト格闘漫画。全19巻。

幽霊になってしまった不良・浦飯幽助が、生き返るための試練として人々の手助けをするというオカルト・ハートフル・コメディで始まったものの、3巻目にして霊界探偵として妖怪や化け物との戦いに明け暮れるバトルファンタジーに変貌する物語。


あらすじ

序編

浦飯幽助は、自分が宙に浮いている、そして下方に自分が血だらけで倒れているのを見て混乱していた。そして、冷静になろうとその日の自分を思い返す。

皿屋敷中学に通う幽助は、その日も授業をさぼり屋上で煙草を吸っていた。しかし、幼なじみの雪村螢子に説教され、陰湿な先生・岩本にカス扱いされ、指導教員に殴られた幽助は、イラつき学校をフケる。

家に帰った幽助だったが、母親・温子にも説教され、ふて腐れて街にくりだす。しかし、万引き常習犯の幽助は、地元の街では店に入ることもできなかった。そんな幽助の前に現れたのは、桑原和真。同級生である桑原は、喧嘩で負けたことが悔しいらしく、その日も浦飯に喧嘩を売ってきたのだった。

桑原をボコボコにした幽助は、一人で遊んでいる子供に出会う。暇だった浦飯は子供とひとしきり遊んだあと、交通量の多い道路だったことから子供を注意してその場を離れる。

しかしそのとき、ボールを追って飛び出した子供が車にひかれそうになり、それを助けた幽助は代わりに死亡したのであった。

幽助が自分の死亡を認識したその時、幽助は櫂に乗った白装束の女から明るく声をかけられる。そのぼたんと名乗る女は言う、自身は三途の川の水先案内人だと。そして、生き返るための試練を受けてみないかと。

子供を助けたことに満足していた幽助は、未練はないから地獄にでも連れて行けとぼたんに伝える。しかしぼたんは、幽助が子供を助けて死ぬなど予定外で、また子供もこの事故で死ぬ予定ではなかったから死者の行き先の空きがないと幽助に告げる。

空きがないなら幽霊のままで構わないと言う幽助だったが、螢子や温子の悲しみや、桑原の怒りとも悲しみとも思える言動、遺影を前にした竹中の思いに触れ、生き返る試練を受けることに決める…。

霊界探偵編

生き返った幽助は、街にくりだす。喫茶店に入った幽助は、前方に陣取る不良の頭らしき男に、角が生えていることを見つける。

そこに桑原が店に入ってくる。桑原は何かを盾に脅されていた。永吉を返してくれと叫ぶ桑原に、不良たちが見せたものは「みゃあ」と鳴く猫だった。

外に連れ出された桑原たちは、猫を盾にした不良たちに脅されるが、横から入ってきた幽助が永吉を解放し、不良たちは倒されるのであった。

そこで幽助は、邪気と呼ばれる異界の者を捕まえる。それは、角の生えた男を倒した時に、男の口から現れたのだ。

そしてそこに突如現れたぼたんは幽助に告げる。幽助はこれから、異界の者がからむ事件を解決する霊界探偵になるのだと…。

暗黒武術会編

戸愚呂兄弟を倒し、探偵業も一息ついたと思っていたその時、戸愚呂弟が幽助の目の前に現れる。

そして、戸愚呂弟は、以前の戦いは本気ではなかったこと、さらには幽助との圧倒的な力量差を見せつける。そして、幽助へ告げる。2カ月後に開かれる、妖怪と人間とが殺し合う武術会へ参加しろと。

その武術会は、五人一組で参加するトーナメント戦だった。幽助、桑原、蔵馬、飛影はすでに武術会のゲストとされており、生き残るためには、勝ち続けるしか道はなかった…。

魔界の扉編

武術会が終わり、元の生活に戻った幽助の前に、3人の男が現れる。校門の前で待っていた男たちは、幽助と同じ学生で、人外であるようにも見えなかった。

ツラをかせという彼らに、普通の喧嘩がしたいと幽助はついて行く。着いた先の空き地で一人の男が言う、タイマンでいいと。しかし、当然、幽助のあいさつ代わりの一発により男は地面に這いつくばることになる。しかし、ゆっくりと立ち上がった男は言うのだった、「オレの”領域(テリトリー)”へようこそ…」と…。

学校の教室、ぼたんは桑原に最近人間の中に現れた不思議な能力者のことを伝えていた。そこに、幽助の霊界獣・プーが現れる。そして、桑原とぼたんに幽助がさらわれたことを告げるのだった…。

魔界統一トーナメント編

人間界に戻った幽助は、もの足りなさを感じていた。もはや人間界に幽助と同等の力を持った存在などいなかったからだった。

幻海に相談することをコエンマに勧められ、幽助は幻海の下を訪れる。そこで幻海は、初代の霊界探偵、佐藤黒呼に会ってみろと幽助に伝える。

黒呼は、結婚を機に霊界探偵を辞め、夫と二人の子供と共に暮らしていた。黒呼の家を訪れた幽助は、子供たちが寝た後も、とりとめもない雑談をしていた。

そこに、訪問者が現れる。それは修行僧のような身なりをした3人の男達で、幽助に話があるようだった。

そして、魔界からきたという男たちは、幽助をスカウトに来たと言う。それは、男達の王であり、幽助の先祖である妖怪・雷禅が死の際にあるという理由からだった。

幽助は魔界に行くことを決める。しかしそれは、戦友だった蔵馬、飛影との別れも意味していた…。

終編

魔界統一トーナメントが終わり、平穏となった人間界と、幽助たちのその後が描かれる。


感想

全19巻ながらポンポン漫画のテーマが変わった作品だったが、ラストの魔界編を読むと、『HUNTER×HUNTER』の世界観を創り上げるまでの、実験的作品だったのではないかと思う。

本作では、人間界・霊界・魔界が存在し、それぞれが独自のサイエンスを持ちながらも、人間と同様に思想、宗教を持ち、戦争し、欲望を満たすために奸計をめぐらし合う。

そしてそこでは人間の歴史のように、残酷なまでに不平等で、財力や暴力や騙し合いによって支配者が決められ、弱いものが搾取される。

それらは、もし科学とファンタジーとオカルトを組み合わせた世界があったら、現実はこうなるのではないかと感じさせるほどにリアリティがある。
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