転生したらスライムだった件 伏瀬 原作 川上泰樹 漫画

転生したらスライムだった件
原作:伏瀬
漫画:川上泰樹
キャラクター原案:みっつばー
掲載:月刊少年シリウス
期間:2015-
巻数:既刊3巻
評価:★★★★★
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『転生したらスライムだった件』は、投稿型WEB小説サイト・小説になろうで連載・公開され、その後商業出版された、異世界転生ファンタジー小説の川上泰樹によるコミカライズ。【転生したらスライムだった件:小説になろう

スライムという最弱のモンスターに転生してしまったものの、対話型の情報処理を高度に実行でき、そしてほぼ無限の容量に万物を収納できるという、転生者ゆえのユニークな技能によって成り上がっていく、モンスター視点の壮大なファンタジー。


あらすじ

突然現れた通り魔に、後輩をかばって刺された三上悟は、ぼんやりとする意識の中考えていた。

寒い血液が足りなくなっているのか…。

大手ゼネコンに勤務し不満はなかったけど、37歳にして童貞で終わってしまった。生まれ変わったら積極的になって、女を喰いまくってやる…。

でも30歳で魔法使いになれるんなら、40歳を目前にした俺は賢者になれたんじゃないか…。

もっと粘れば大賢者になれたんじゃないか…。

死に際のそんな思考に対し、何故か無機質な音声の返答があった。

確認しました。血液が不要な身体を作成します。
確認しました。ユニークスキル「捕食者」を獲得…、成功しました。 
確認しました。エクストラスキル「賢者」を獲得。  
確認しました。エクストラスキル「賢者」を進化させます。 
…成功しましたエクストラスキル「賢者」はユニークスキル「大賢者」に進化しました。

頭に響くその音声を聞きながら、悟は自身の死を感じていた。


悟が気づくと、そこは暗闇であった。何も見えず、何も聞こえない。手足の存在さえ感じることができなかった。

試行錯誤した末、どうやら触覚だけは生きているようで、身体を動かすことは出来るようだった。

そして、腹の下に草のような物があるのを感じ、味覚の有無を確認しようと食べようとしたその時、草は自らの身体に吸収され、溶けてなくなったことを知覚した。

悟は、人間とは異なる存在になってしまったのだ。

その身体の構成を確認しようと、悟は身体表面の触覚に集中する。それはひしゃげた球状でぷるんとした質感を持っていた。

そして悟は、先ほど植物を分解し吸収したことも考えあわせ、自身がスライムになってしまったことに気づくのだった…。


スライムに転生した悟は、その身体にすっかり順応していた。食事も睡眠も不必要で自己再生機能もあり快適であった。しかし、孤独だったので、暇つぶしに草を食っていた。

そしてふと、排泄していないけど、草はどこ行ったんだと考えたそのとき、悟は死に際に聞こえたあの声を知覚する。

その声によると、どうやら草はユニークスキル「捕食者」の機能である胃袋に格納されているようで、その声はユニークスキル「大賢者」の効果によるものであった。

そして、世界によって成長が認められた場合に稀にスキルが獲得できることを知る。


スキルと会話できたことに調子に乗り油断していた悟は、うっかり地底湖に落ちてしまう。

スライムに呼吸は不要のようであった、地底湖から脱出するために悟はある作戦を思いつく。

水を捕食して、勢い良く吐き出せば水中を進めるのではないかと…。

とりあえずやってみた悟は、勢い余って壁に叩きつけられてしまったものの、「水中推進」なるスキルを獲得するのであった。


迂闊なことをするものじゃないな…、などと考えながらプルプルしていた悟は、悟に呼びかける「大賢者」とは異なる声を知覚する。

その未知なる存在は、「念話」というスキルで呼びかけているらしく、思い浮かべるだけで意志の疎通が可能であった。

またその存在は、この世界に満ちている魔力を感知する「魔力感知」によって、視ることと聴くことが可能であることを教えてくれた。

「大賢者」の支援によりすぐに「魔力感知」を獲得した悟は、自身が洞窟内部に居ることを知る。

そして、魔力の存在を教えてくれたその存在に知覚を向けた時、それが禍々しくも威風溢れる竜・暴風竜ヴェルドラであることを悟は知るのであった…。


感想

モンスター視点の異世界転生ファンタジーとして、一つの到達点ともいうべき名作。

冒険、国造り、魔物世界での勢力拡大、人間、魔物との間の戦争などファンタジーの旨味を余すことなく押さえ、魔物や魔法、スキルなどのシステムも設定だけで面白い。

そして、ファンタジー世界に組み込まれる科学や経済の概念、それらと魔法などのファンタジーの事物との間の融合など、異世界転生物語に特有の描写もエキサイティング。

また、モンスター、人間共に大量のキャラクターが登場するにもかかわらず、どのキャラクターも個性的ゆえに人物を取り違えることもなく読みやすい。

漫画化に際しても、ファンタジー世界の描写から人間の描き分け、そしてモンスターの描写など、どれも適切で、緻密さについても良いレベルを確保できている。

WEB版、小説版共に愛読している自分としては、漫画も最後まで描ききって欲しいと願わずにはいられない。


小説版

転生したらスライムだった件
作者:伏瀬
イラスト:みっつばー
出版:マイクロマガジン
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