僕だけがいない街 三部けい作

僕だけがいない街
作者:三部けい
掲載:ヤングエース
期間:2012-2016
巻数:全9巻
評価:★★★★★
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三部けい作の『僕だけがいない街』はヤングエース(青年漫画雑誌)で連載中のミステリー漫画で、『このマンガがすごい!2014』オトコ編第15位、『このマンガがすごい!2015』オトコ編第9位。【ウィキペディア:僕だけがいない街

一見超能力物として始まる物語だが、実際は主人公・悟の抑圧された記憶に関係する事件を明らかにしていくミステリーである。

本作は、現在と悟の幼少期という2つの時間軸で物語は進行する。「再上映(リバイバル)」という悟の超能力によって実現される幼少期のストーリーは、謎を解き明かす物語であると同時に、悟の悔恨を払拭しトラウマが癒えてゆく過程をも描く。この過程における悟の言動や心理も、本作の見るべきものの一つ。

登場人物もいい。物語の導入で人生の落伍者のように描かれる悟だが、「再上演」の描写や心理描写などを通して不器用ながらも芯のある人間性に極めて共感を感じてくる。また悟の母親である佐知子も魅力的な人物で、女手一つで悟を育ててきた強さや悟への思いが身に染みる。

以下はネタバレ注意。



あらすじ(導入)

売れない漫画家である藤沼悟は、「再上映(リバイバル)」という超能力を持っていた。それは未来の惨事を感じ取ってしまうというもので、彼はその能力が発現する度に「だれかにお前が防げと強制されているかのように」感じ、その「悪い事」を防ぐ行動を起こしていた。

ある日悟は母親・佐知子とバイトの後輩である愛梨との外出中に「再上映」に遭遇する。その「悪い事」は佐知子がある人物の存在に気付いたことにより回避されるが、その出来事は悟の幼少期にトラウマを植え付けた事件がまだ終わっていないことを告げるものであった。

その日から佐知子は、そのとき見かけた人物について調べ始める。それは悟のトラウマの原因である児童連続誘拐事件の犯人とも言うべき人物であり、その事件は佐知子が悟の記憶から遠ざけようとしたものであった。

悟はいつものようにアルバイトを終え、家に帰宅する。居るはずの母親に声をかけても反応はなく、奥に踏み込んだ悟が見たのは、腹を刺され息絶えている佐知子の姿だった。

そこで悟に再上映が発現する。しかしそれは母親が刺され死んだ直後。悟は犯人を追うが、逆に悟が母親を殺した犯人であるかのような状況に陥ってしまう。

そして警察に追われ捕まりそうになる刹那、再び発現した再上映により、悟は18年前の1988年にタイムスリップし、小学生の自身になってしまうのだった・・・。


あらすじ(幼少期1)

小学生時代に戻った悟がすべきことは、母親が殺される未来をいかに変えるのかということだった。そして悟は、それが悟のトラウマの原因となった児童連続誘拐事件の被害者である雛月加代を救うことだと気付く。

悟はすぐに加代が虐待を受けていることに気づく。そしてそれ故に加代はクラスで孤立し、誘拐犯に狙われたのだと。

そして当時は深い関わりのなかった加代に近づき、加代を救おうと悟は動き出すのだった・・・。
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