いとしのニーナ いくえみ綾作

いとしのニーナ
スピカ
(2005-2010)
全4巻
いくえみ綾
★★★★☆
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いくえみ綾作の『いとしのニーナ』はスピカで2005年から2010年まで連載していた人間ドラマ。全4巻。

拉致監禁という極端な展開で始まる物語だが、その後は登場人物の心理を描くことに費やされ、ゆったりと穏やかに進行していく。

そこでは、危機的状況を救った男と救われた女のよくありそうな展開、しかしそのような思いは一時的なものに過ぎず、この出来事を乗り越えるために救った男を切り捨てていくリアルな女性の行動が描かれる。

そして最後には、恐怖感しかなかった拉致の首謀者さえ、その人間としての弱さを感じ取り、自身がその上に立つことで乗り越えてしまう女のたくましさが描かれる。


あらすじ

高1の外山厚志は小学校からの付き合いである押川正行にある日言われる。
「青田新名」
がっこうがえりに
拉致りました
厚志が一人で暮らしている正行のアパートに行くと、そこには手足を縛られ、口をテープでふさがれた新名がいた。

2人にとって、新名は通学の電車の中だけで見かける憧れの女子で、正行にとっては高嶺の花のような存在だった。

しかし厚志は、正行が一人でこんなことをできる人間ではないと知っていた。そしてその実行犯を聞くと、牛島という自校の不良で、厚志もなるべくなら関わりたくない男だった。

そして部屋に来るという、牛島からの連絡が入る。

新名を連れて一緒に逃げようと言う厚志に、正行は牛島への恐怖感から抵抗する。2人はもみ合いになるが、牛島が部屋の前に来たとき、正行は部屋に残ると言い、厚志は新名を連れて逃げる。



牛島からの電話にビビり、携帯の電源を切っていた厚志だったが、いつまでも家に閉じこもっているわけにもいかず、学校へ行くことに決める。

その通学の電車で、厚志は新名といつも一緒にいる女子・麻美に話しかけられる。
あんた
新名のこと
知らない?
麻美は動揺を隠し切れない厚志を怪しみ、詳しい話を聞くため、学校終わりに厚志を呼び出す。

その待ち合わせ場所で、厚志は結局全てを麻美に話してしまう。すると麻美は強く怒りを厚志にぶつけてきたが、最後には
あんたが
新名を助けて
くれたわけだ
とりあえず
と、「とりあえず」を強調して言うのだった。

そして麻美は、新名に一緒に会いに行くと言いだす。それは新名のショックをできるだけ消してやりたいという気持ちからだったが、厚志にはとんでもない愚行にしか思えなかった。

しかし麻美が真摯に新名のことを考えているように見えたので、厚志は渋々了承し、2人は新名の家に向かうことになる。

新名の家の前で、厚志は麻美が新名と話をつけてから会うと言い、家の前で待つ。

しばらくして家の前に出てきた新名に、厚志は唯々謝るしかなかった。そして最後に新名に言われる、
責任とってよ
中途半端じゃなく
あんた私を守りなさいよ
牛男の魔の手から
と・・・。

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