ふだつきのキョーコちゃん 山本崇一朗作

ふだつきのキョーコちゃん
作者:山本崇一朗
掲載:月刊少年サンデー(ゲッサン)
期間:2013-2016
巻数:全7巻
評価:★★★★☆
Amazonで詳細を見る
山本崇一朗作の『ふだつきのキョーコちゃん』は、月刊少年サンデーにて2013年から2016年まで連載していた学園コメディ。全7巻。

血を吸わないと動けなくなり、頭のリボンがないと人を襲ってしまう、そんな妹をもった兄が妹を守るために日々奮闘するコメディタッチの兄妹物語。

また、普段はツンツンした妹が頭につけたリボンが取れると途端に素直で可愛いらしく(しかし凄まじい怪力で血を吸おうと噛み付いてくるが…)なるという変則的なツンデレ要素もあり。


導入

屈強な不良と恐れられている札月ケンジは、その日も妹・キョーコにちょっかいを出す生徒に睨みを利かせ、脅しをかけていた。

そのとき、スパァンとケンジの頬は叩かれる。大きなリボンを頭につけた可愛らしい女子高生によって…。

それはキョーコだった。この高校にケンジに逆らおうとする者などいなかったが、ケンジは唯一、キョーコにだけは弱かった。そしてそんなケンジは「シスコンヤンキー」と裏では噂されていた。

キョーコはケンジを探していたようだった。そしてキョーコが震えていることに気づいたケンジは、
メシ…か。
と、キョーコと連れ立って屋上に向かった。そして、誰もいない屋上でキョーコはケンジの首に顔をうずめる…。

無事か!!?
ケンジは休み時間になるたびにキョーコの教室に来ていた。リボンが緩んだりしていないか、ちょっかいをかける奴がいないかと。

実のところ、ケンジの不良っぽい態度や服装もキョーコに男が近づかないようにするためだった。

しかしキョーコはケンジに面倒くさそうに言う。
そんなんだからシスコンって言われんのよ。
それにケンジは返す。
オレはシスコンじゃねぇえ!!

放課後。ケンジはいつものようにキョーコを迎えに行きいっしょに下校する。

そして二人が生徒会室の前を通ったそのとき、中からケンジのことを話す女子の話が聞こえる。日々野さん札月兄とよく会話できるよね、怖くないの、と話す女子の声が…。

ケンジの同級生である日々野は、ケンジに気さくに話しかけてくる唯一の女子であり、ケンジの憧れの存在でもあった。

それに日々野は答える。
札月君てすっごくシスコンだし。

それは、だからこそ他の人にも優しい人だという意味だったが、日々野さんにさえシスコンと思われていることにケンジはショックを受ける。

それは誤解だと、ケンジは放送室に駆け込み、叫ぶ。
オレは、シスコンじゃない!!!
妹のことなんて全然好きじゃない!
できることならほっときたいんだ!!
ただ…妹にちょっかいをかける奴がいたらと思うと…心配で心配で…!!

しかしそれを聞いた者は、札月兄はやっぱりシスコンだとみんな一様に思わざるを得なかった。そしてケンジも、自分の本心が伝わっていないと頭を抱えるのであった…。

帰宅しても落ち込んだままのケンジ。それを見たキョーコは、
どうせ私のせいだって思ってんでしょ。
私がこんなだから。
とケンジに言い、部屋を出る。そのとき、引き戸にはさまったリボンが解ける。

それを見たケンジがキョーコを追ったそのとき、キョーコがケンジに襲いかかる。
お兄ちゃん、ゴメンね。
お兄ちゃんが落ちこんでたから、元気づけようと思ったんだけど…
と素直になれない自分を謝りながら、キョーコはケンジを押さえつけ、そのままケンジの首筋に噛みつく。

キョーコはキョンシーだったのだ。そんなキョーコは、力も人間の数十倍あり、血を定期的に飲まないと動けなくなってしまう。そして、札の代わりのリボンが解けると、本能のままに人を襲うようようになり、そして素直になった。

気が飛びそうなのを堪えながら、ケンジはリボンを取り、キョーコの頭に結ぶ。そして、お前のせいだなんて思ってない、兄妹なんだからとキョーコをなだめる。

しかしそこにはもう素直なキョーコはいなかった。そして、
私は悪くない。
悪いのは私に構ってくる不良のシスコンお兄ちゃんね。
と、ケンジに言うのだった…。


あらすじ

キョンシーである妹・キョーコをもつ高校生・ケンジは、不良のふりをして、キョーコにちょっかいを出す奴が出てこないように、日々を過ごしていた。

それはキョーコが、人間の数十倍の力があり、お札の代わりであるリボンが外れると、本能のままに血を求めて人に噛みついてしまうからだった。

またキョーコは、一日に何回か血を吸わないと動けなくなってしまうので、昼休みには誰も居ないところでキョーコに血を与える必要があった。

そんな諸々の事情がバレないよう、ケンジは休み時間でも放課後でもキョーコの下に行き、周囲に目を光らせていた。

しかしそんなケンジには悩みがあった。それは、周囲の人間に重度のシスコンだと思われることだった。しかも、ケンジが憧れている同級生の日々野さんまでにそう思われていたので、ケンジはその誤解を解こうと奮闘する。しかし、それはいつも徒労に終わってしまうのだった…。


感想

妹・キョーコの秘密を守るために日々奮闘する兄・ケンジの男らしさが際立った作品。しかしそんなケンジに気負いはなく、兄妹だから当然のことと、自身を犠牲にしていることも気にしない姿は、まさにアニキというべき貫禄がある。

しかしそんなアニキの男道は、いろんな人に誤解され、後輩の空手部の女に殴られ、と寂しくも厳しい歩みが続く。

しかしそこに刺す一筋の光のような、ケンジの想い人・日々野さんとの関係は、ケンジ頑張れ、そして幸せになってくれと思わずにはいられない。


キョンシーとは

30代位の面々には、キョンシーといえば1985年の『霊幻道士』や後の『テンテンシリーズ』などの、足を揃えたままピョンピョン近づいて来て、足払いしても体を伸ばしたままピョンと起き上がってくるアレを思い出すかもしれない。

しかし本来のキョンシーは、中国における伝承上の妖怪で、室内に安置された死体が夜中に起き出し人を驚かすというモノのことである。【ウィキペディア:キョンシー
スポンサーリンク