ベルセルク 三浦建太郎作

ベルセルク
作者:三浦建太郎
掲載:ヤングアニマル
期間:1989-
巻数:既刊38巻
評価:★★★★★
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三浦建太郎作の『ベルセルク』は、1989年からヤングアニマルにて連載されているダーク・ファンタジー漫画。

中世ヨーロッパのファンタジー世界を舞台に、復讐に生きる男を描く。

中世ヨーロッパの暗黒面をリアリスティックに参照しつつ、伝説や伝承に基づくファンタジー・オカルトの事物を縦横に取り込み、さらには古代インド思想を具現化した世界観は、凄惨で陰鬱ながら極めて重厚である。

以下はネタバレ注意。


あらすじ

黒い剣士編

黒い剣士

その恵まれた体躯を持った男は、戦場を渡り歩く傭兵のようだった。しかし、背中に背負う鉄塊のような大剣が、その姿を異様なものにしていた。

その男・ガッツは、ゴットハンドと呼ばれる者達を探すため、使徒という化物を追い求める旅の途上にあった…。

傭兵:中世ヨーロッパの戦闘では、王に仕える騎士を中心とした封建軍と共に傭兵が参加しており、王政の未発達な国の人間が傭兵となることが多かった。傭兵は敵を倒して雇用主から得る報酬だけでなく、戦場での略奪や敵有力者の誘拐身代金なども収入としていた。【ウィキペディア:傭兵

烙印

酒場で助けたエルフ・パックと共に、ガッツは旅を続ける。

ガッツの首筋には生贄の烙印という傷跡があった。その烙印は、化物達を実体化させ、引き寄せる力があった。それゆえに、ガッツは毎夜、化物たちと戦い続けなくてはならない運命にあった…。

エルフ:ゲルマン神話に起源を持つ、北ヨーロッパの民間伝承に登場する種族。エルフは、森や泉、井戸や地下などに住むとされ、しばしば、とても美しく若々しい外見を持つものとして描かれるが、その大きさは伝承により様々である。また彼らは不死あるいは長命であり、魔法の力を持つとされる。【ウィキペディア:エルフ

欲望の守護天使

ガッツが訪れたその都市は、独裁的支配者である伯爵の圧政下にあった。ガッツはそこで、バルガスという男に出会う。

バルガスは、伯爵に憎しみを持ち、人ならざる者になった伯爵に妻子を喰われた過去を持っていた。そして伯爵が魔物となったのは、ベヘリットと呼ばれる不気味な形状をした卵型の物体を手に入れた後であったとガッツに伝える。

ガッツもまたベヘリットを知っていた。それは、異なる世界への扉を開く鍵であり、闇の歴史を支配してきたゴットハンドという五人の化物を呼び出す鍵であった。

そしてガッツは伯爵と戦うことになる。激しい戦闘に瀕死の状態になりながらもガッツは伯爵を追い詰める。しかし、ベヘリットに付着した伯爵の血が異次元世界への扉を開いてしまう。

そのトリックアートのような空間には、五人の化物がいた。そしてその中の一人、グリフィスをガッツは追っていたのだった…。

都市:中世ヨーロッパでは、城砦や教会を中心として商人の集落が広がり、それを壁で囲う都市が多く存在した。【チリツモ【中世ヨーロッパ情報館】:都市と市民


黄金時代編

黄金時代

戦場跡に吊るされた骸より生まれた赤ん坊は、傭兵団隊長・ガンビーノの情婦・シスに拾われ、ガッツと名付けられる。しかし、母親代わりとなったシスは、ペストによって死んでしまう。

その後もガッツは、傭兵団の中で成長していき、6歳にして剣を握り、9歳にして戦場に出る。そして、剣の腕を磨き続け、11歳にして敵の大将を倒すほどとなった。

しかしガッツは、その傭兵団を追われることとなる。それは、ガンビーノを殺してしまったがゆえのことだった。ガンビーノは、シスを失い、戦で片足を失い、酒に溺れた挙句に、ガッツを殺そうとしたのだ。

ガンビーノに認められることだけを求めて、ガッツは剣を振るってきた。しかしガンビーノにとっては、ガッツは不運を呼びこむ呪われた子供でしかなかったのだ。

一人になったガッツは、その後、傭兵として幾多の戦場を経験する。どの戦場においても、ガッツの戦いは鬼気迫るもので、それは死に場所を求めているかのようであった。

そして4年後、ガッツは鷹の団という傭兵団の一員となる。それは、ガッツの力を欲した団長・グリフィスとの決闘に敗北したゆえのことだった…。

剣風

ミッドランド王国とチューダー帝国は、100年に渡る永き交戦下にあった。

その戦闘は、チューダー帝国の重装騎兵団による一方的な殺戮の場と化していた。そこに、重装騎兵団に突撃していく一騎の騎兵が現れる。飛び込んでいったその騎兵の一振りは厚い鎧を切り裂き、兵を真っ二つにしていく。

そこに、さらに一隊の騎兵団が襲いかかる。それは、白い鷹・グリフィス率いる鷹の団であり、単独で切り込んだ騎兵はガッツであった。そして戦闘は、鷹の団の働きによりミッドランド王国の勝利に終わる。

そして、鷹の団によってもたらされたこの勝利は、グリフィスに騎士の称号と爵位を与え、鷹の団という傭兵団をミッドランド王国正規軍と認めるほどの戦果となるのだった…。

騎士:騎士とは騎乗して戦う者を指すが、ここでの用法は身分や階級としての騎士である。中世ヨーロッパにおける騎士は、その時代や国によっては必ずしも貴族とみなせるわけではなく、貧しい兵士が叙任されてなることもあった。しかしながら、その装備や馬を維持できるだけの財力を必要としたので、領主階級と事実上重なる部分が大きかった。本作では、騎士が排他的・閉鎖的身分集団である時代および国の騎士制度を参照しているとみられる。【ウィキペディア:騎士

爵位:中世ヨーロッパにおける爵位は、地方分権の過程で世襲化されたもので、担当する行政区域に応じて与えられた。それはつまり、領地を持たない家系は爵位がないことを意味する。しかし本作の爵位が、このような称号であるかは不明である。【ウィキペディア:爵位

不死のゾッド

鷹の団は一つの砦を落とす途上にあり、残すは本丸のみであった。その本丸も、ガッツ率いる切り込み隊に包囲され、砦が落ちるのは時間の問題かと思われた。

しかし本丸は、たった一人の敵のために落とすことができなかった。その敵は、100年以上に渡って戦場に現れてきた不死のゾッドと呼ばれる伝説的存在だった。

しびれを切らしたガッツは、一人本丸に乗り込む。そこには死体の山が築かれ、人間離れした大男が立っていた。

剣技は互角、しかし肉体的能力はゾッドが遥かに上回っていた。しかしガッツは、ゾッドの剣を折り、剣を打つ込むことに成功する。その刹那、ゾッドは巨大な黒い牛様の化物に姿を変える。

それは、ガッツにとって初めての人外との遭遇であった。そして、もはやガッツには手も足も出なかった。そこにグリフィスの一隊が現れるも、蹴散らされ、グリフィスも激しく柱に打ち付けられ気を失ってしまう。

しかしゾッドは、グリフィスが首に着けたベヘリットを見るや、とどめを刺すの止め、
この男の野望が潰える時………
貴様に死がおとずれる
とガッツに言い残し、去って行くのだった…。

剣の主

負傷の末とはいえ、砦を落としたことにより、グリフィスたちの王宮での名声はさらに高まっていた。しかしそれは、既存勢力の危機感を煽ることとなり、グリフィスへ向けた謀略の発端となるのであった…。

暗殺者

王の狩りの護衛に任命された鷹の団。しかしそこで、グリフィスは毒矢を射られる。それは、かすっただけで死に至るほどの毒矢だったが、矢はベヘリットに当たり、グリフィスは無傷であった。

暗殺者は取り逃がしたものの、グリフィスは独自に毒の成分を調べ、首謀者を特定していた。そしてグリフィスは、ガッツに首謀者であったユリウス伯爵の暗殺を指示する。

ガッツにとってユリウスの暗殺は容易であった。しかし、現場をユリウスの息子に見られ、ガッツは息子をも殺す。護衛隊にも発見されたガッツだったが、何とか振り切ることに成功する…。

貴きもの

暗殺の件をグリフィスに伝えようとしたガッツは、キャスカに止められる。それは、グリフィスがシャルロットと共にいたからだった。シャルロットが去るまでと、ガッツとキャスカは会話が終わるのを物陰で待つ。

そこでグリフィスはシャルロットに語る。自らの目指すもの、そして自分にとっての友とは何かについて。

それを聞いていたガッツは、グリフィスが今の自分には手の届かない高みにいることを感じ、その場を離れる…。

出陣

ミッドランド王国とチューダー帝国の合戦へグリフィスたちは出陣する。

合戦

先陣を切った鷹の団は乱戦に陥い、キャスカはチューダー帝国騎士団団長のアドンと戦闘に入っていた。しかしその日、キャスカには月の物が訪れ、また不調であった。アドンは強く、キャスカは危機に陥る。

寸前、ガッツはキャスカを救う。しかし、気を失ったキャスカとガッツは崖に落ちてしまうのだった…。

キャスカ

川に落下したためガッツは助かり、キャスカも息を吹き返す。しかしキャスカの体は冷え熱を帯びていたため、ガッツは人肌でキャスカを温め、キャスカが回復するのを待った。

目を覚ましたキャスカだったが、依然熱は下がっていなかった。回復を待つ手持ち無沙汰から、ガッツはキャスカに鷹の団を入った理由を尋ねる。そしてキャスカはグリフィスとの出会いを語る…。

決死行

ガッツは、遠くに人の声を聞く。それはアドン率いる隊の声だった。そしてすでにガッツたちは囲まれていたのだった。

ガッツとキャスカは戦闘に入る。しかしそれはあまりにも多勢に無勢だった。そこでガッツは、隊の前に立ちふさがりキャスカを逃す…。

生還

キャスカは走った。鷹の団に知らせ、敵陣に残ったガッツを救うため。しかし、アドンの隊の一部がキャスカを追っていた。そして追いつかれ、捕らえられてしまう。

しかしそこに援軍が現れる。鷹の団の一隊が、ガッツとキャスカの救出に来ていたのであった。助かったキャスカは、隊とともにガッツの下へ向かう。

ガッツの下へ着いたのは、夜も明けるころだった。日が射す森のなかには、100とも知れない人の死体が積み重なっていた。

そしてその奥には、気に持たれ掛かるガッツがあった。ガッツは生きていた。ガッツは一人で一隊を全滅させたのだった…。

夢のかがり火

軍の野営に戻り、鷹の団は一時の休息の時にあった。そして、野営の火を一人見つめていたガッツの下にキャスカが訪れる。

キャスカは、ジュドーからもらった妖精の鱗粉をガッツに塗っていった。妖精の鱗粉は、即効性の傷薬だったのだ。

人々が囲む火を眺めながら二人は語り合う。そしてそのガッツの話は、鷹の団との離別を暗示していたものだった…。

妖精の鱗粉:妖精の鱗粉に不思議な力があるという記述は、1904年に演劇で、1911年に小説で発表された『ピーターパン』の物語で登場する。この物語の中では、妖精・ティンカーベルの鱗粉(fairy dust)をかけられた者は空を飛ぶことができた。【Wikipedia: Peter Pan

ドルドレイ攻略戦

難攻不落の城塞ドルドレイ、それはチューダー帝国によるミッドランド王国侵攻の要であり、これを取り戻さずに、戦争の終結はなかった。

しかし、ミッドランド軍は既に一騎士団をドルドレイ戦で失っており、ミッドランド諸侯でドルドレイ攻略に手を挙げる者はいなかった。

その城塞攻略にグリフィスは名乗りを上げる。それに対し、ミッドランド王は決断し、鷹の団に攻略を命じる。

ドルドレイを前にグリフィスが敷いたのは、川を背にした背水の陣。そしてその前には、チューダーの主力・紫犀聖騎士団が相対していた。

鷹の団は突撃し、たちまち乱戦となる。しかしすぐに、鷹の団は後方に退く。それにチューダーは追撃をかける。

一方、キャスカ率いる一隊は城塞に侵入していた。グリフィスが狙っていたのは、主力を欠いた城塞を攻め落とすことであった。

そして作戦は成功し、ドルドレイ攻略は鷹の団のみで成し遂げられたのであった…。

凱旋

鷹の団の勝利に沸くミッドランドの首都ウィンダム。しかしその裏では、ミッドランドの文官によるグリフィスの暗殺が計画されていた…。

栄光の瞬間

ミッドランド王国の戦勝式典が開催され、グリフィス、そして鷹の団の千人長の面々、ガッツ、キャスカ等が招かれていた。

鷹の団の面々の周りには人が集まり、その強さを褒め称えた。そして王が現れ、グリフィスには軍の最高位、全ての千人長には爵位が約束された…。

炎の墓標



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