私家版魚類図譜 諸星大二郎 作

私家版魚類図譜
作者:諸星大二郎
掲載:増刊モーニング
期間:2004-2007
巻数:全1巻
評価:★★★★☆
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諸星大二郎作の『私家版魚類図譜』は、増刊モーニングにて不定期に発表された海の生き物に関する読み切りを集めたSF・ファンタジー漫画。

深海のグロテスクな生き物と美しい人魚という取り合わせに神秘さを感じる『深海人魚姫』、中国の伝奇物語『鮫人』、奇妙な世界観が表現された『魚が来た!』、伊藤潤二的にシュールで奇妙な物語『魚の学校』、ある男の悲哀と諦観、そして狂気を描いた『魚の夢を見る男』、『深海人魚姫』の後日談、人間になった人魚の美しくも切ない物語『深海に還る』、深海のトリビア小話『ネタウナギ』から成るオムニバス漫画。

伊藤潤二:『うずまき』や『富江』などで有名な怪奇漫画家。


私家版魚類図譜

深海人魚姫

★★★★☆
日光の届かない不毛な深海。しかし硫化水素が吹き出るホットスポットにはそれを糧にしたチューブワームの森が広がり生態系があった。

その森に住む一人の人魚が潜水調査船に出会い、船に乗った人間に興味を持つところから物語は始まる。そして彼女は仲間の人魚たちやマッコウクジラに話を聞くにつれ、次第に浅海や陸へ行きたいと強く願うようになる・・・。

鮫人

★★★★☆
舞台は宋の時代の中国。官職の男・チャンの船が難破し、目覚めるとそこは小さな島の沿岸の海の上に作られた集落であった。

故国に戻る術もなくチャンは若い女・サーラとその子供らしい女の子、そして女の母親らしい老婆という三人の住む家に身を置いていた。

しかしその集落には謎があった。それは集落が海の上だけにあり島には建物が一つもないこと、そして集落に女子供しかいないことだった。

ある朝チャンが目覚めると、隣の家との渡し板が外され家を出れなくなっていた。サーラは食べ物を届けに船で訪れたが、しばらく来れないと言って離れていってしまうのだった。

それ以来、家は孤立し村人も見かけなくなってしまう。しかし夜になると、どこからか大勢の女の歌声が聞こえてくる。

そんな夜が続き、チャンは歌声の元を探しに泳いで家を離れる。鮫に追われながらもなんとか隣に移り島に向かったチャンだったが、そこに見たのは女たちが海に向かって歌い踊り、それに呼応するかのように岸に集まる鮫の群れだった・・・。

魚が来た!

★★★☆☆
広大な蟻の巣のような入り組んだ地下に人が住むようになった未来。海も本物の魚も見たことがない子供たちが、地底の廃墟を探索し、巨大な魚のいる地底の海を発見する話。

魚の学校

★★★☆☆
近くの中高生のたまり場となっている甘味喫茶「渚」。そのマスターは、学生たちの相談に乗るのを趣味としていた。しかし、その相談に対する答えはいつも「魚の学校に行け」というよくわからないものであった。

様々な悩みがあった梓も、マスターに相談に乗ってもらうが、ここでもやはり答えは「魚の学校に行け」で、それは市立病院の坂道の向こうにあるとのことだった。

それで自身の悩みが解決するとはとても思えなかった梓だったが、魚の学校に行って変わっていくクラスメートを見て、梓も魚の学校に行こうと心に決めるのだった・・・。

魚の夢を見る男

★★★★☆
しがないサラリーマンのその男は魚が趣味だった。熱帯魚を飼い、古代魚の模型を作り、毎夜魚について調べ、そして自身が魚になる夢を見てしまうほどに魚が好きだった。

しかし嫁や子供は男に無関心で、嫁は「合唱のサークル遅くなるから」と言って夫である男のことはほったらかしだった。

そんな男の夢は生物の進化を辿る様に進展していき、魚になった男はついに2本の足で地上に立ち、移動できるまでになった。

一方現実の男の生活は冴えず、休みの日も近所をうろうろするのが関の山。しかしある日の散歩の途中、男は路地に迷い込み突き当りに黒いドアを見つけるのだった・・・。

深海に還る

★★★★☆
クジラと会話し、深海魚のことを誰よりも熟知し、マンタをイルカのように飼いならす女性がいる。海洋学者達の海に生きる女性のうわさ話から物語は始まる。

そんな女性に関わった人々が徐々に登場し、その女性へとだんだんと焦点が合っていき、女性があの時の人魚だったことが明らかになっていく・・・。

ネタウナギ

★★★☆☆
ネタを求めて深海を徘徊するネタウナギが、チョウチンアンコウなどの深海生物の変わった生態を紹介していく、雑学紹介的物語。
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