ウツボラ 中村明日美子 作

ウツボラ
作者:中村明日美子
掲載:マンガ・エロティクス・エフ
期間:2008-2012
巻数:全2巻
評価:★★★★☆
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中村明日美子作の『ウツボラ』は、マンガ・エロティクス・エフで2008年から2012まで連載していたサイコサスペンス。全2巻。

本作には様々な側面がある。一つには漫画とは思えないほどのクオリティを持って構築されたサスペンスという側面。更には、生き方を模索する人々の先鋭化した形の人間物語や、純粋なある愛の形と肉欲に沈んでいく人間を描いた愛憎劇もまた描かれる。

物語は初老に差し掛かったある作家と2人の女性を中心に描かれる。その2人の女性は、共に少女の様な顔立ちをしながら肉感的な四肢を持った美少女で、1人は自殺し、もう1人は大きな計画の駒となる。それは尊敬や熱望から生じた支配欲を動機として計画され、周囲の人々を飲み込んでいく。


あらすじ

作家・溝呂木舜の許に警察からの電話が入る。それは身元不明な女性が亡くなったので、電話の履歴にあった舜に身元確認して欲しいとの連絡だった。

病院への道中、舜は出版社主催のパーティーで出会ったその女性・朱(あき)のことを思い返していた。

警察に伝えられた病室の前に来ると、若い女性が座っていた。顎まで伸びた切り揃えられた黒髪の透き通るような白い顔をした女性だった。舜はその女性を見たとき、目をむき、呆然とする。

気づくと舜はベッドに横になっていた。彼女を見て直ぐに倒れてしまったようだった。それは廊下の女性が、死んだと伝えられた朱だと思ったからだった。

刑事にそれを話そうとしたとき、死んだ女性は自殺だったと伝えられる。そして遺体の損傷は激しく、顔も判別できないほどだと刑事は言う。

病室の前に座っていた女性、それは朱の双子の妹だと警察は言った。遺体を舜に確認させながら、刑事は舜と朱の関係を訝しむように尋ねてきたが、舜は言う。朱との間には関係というほどの付き合いはない、彼女と会った日時や場所は追って連絡すると。

そして舜は遺体の安置された病室を出た。舜が部屋を出たとき、刑事に連れられた朱の妹とすれ違う。そして朱の妹もまた、遺体確認のため病室に入って行った・・・。



身元確認を終え病室を離れた朱の妹は、廊下で待っていた舜に気づき足を止める。直ぐにその場を離れようとした朱の妹だったが、舜は朱の妹に呼びかけ、少し話したいと伝え、朱の妹もそれを了承する。

喫茶店で朱の妹は自身を桜と名乗った。そして
あまり悲しんでいるふうではないね
と聞く舜に、
ずっと姉とは疎遠でしたから
・・・略・・・
ずっと音信不通だったんです
つき合いがはじまったのはここ最近のことです
と返す。

そしてケーキを口に運び、微笑みながら、
姉との関係を聞かせて下さい
溝呂木先生
と言うのだった・・・。
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