湯神くんには友達がいない 作者:佐倉準 掲載:週刊少年サンデーS、週刊少年サンデー 期間:2012- 巻数:既刊9巻 評価:★★★★☆ Amazonで詳細を見る |
極端にマイペースで、まるで一人で生きているかのように毎日を過ごす湯神くんを主人公とする、高校を舞台とした物語。
転校してきた綿貫ちひろとの係わりが多く、藤沢梨緒という同級生からラブレターをもらったりもしたが、湯神くんに係わって恋心を抱くなどということは全くなく、ゆえにラブコメ要素は皆無である。
導入
綿貫ちひろが上星高校に転校してきた初めての登校日。ちひろは、駐輪場で途方に暮れていた。自転車を停めるべき場所に空きがなかったのだ。そこに男子高校生・湯神裕二が現れる。彼は、整然と停められた自転車の1台をおもむろに引っこ抜き、自分の自転車を停める。
全く迷いのないその行動に、ちひろは
それって…、いいんですか?と聞く。彼は、ここは青ステッカーをつけた自転車の駐輪場なのに、赤ステッカーの自転車を停める奴がいるんだと言い、そしてもう一台の自転車を引っこ抜き、
ここに停めるといいよ。と言ってくれる。ちひろはそれに感謝の意を述べて、自転車を停めた。
ホームルームが始まり、ちひろは新しいクラスで自己紹介をする。最後尾の席を割り当てられたちひろは、今朝会った湯神が隣の窓側の席であることに気づく。
今朝の出来事から、湯神を親切な人物だと思ったちひろだったが、自分が隣の席になったことに対する湯神の微妙な顔、そして窓を閉めてもらおうとお願いした時の二の句が告げないほどのばっさりとした拒絶に、違うかもしれない、よくわからない人だ、とちひろは考え始める。
そんな感想はおよそ間違っていないようで、休み時間にちひろの周りに集まってくる女子生徒たちは、転校早々から湯神の隣で災難だとか、湯神は偏屈で扱いづらいとか、挙句の果てに「奴の事は見て見ぬフリが一番よ。」と、湯神をボロクソに言う。
容赦のない悪口にちひろはヒヤヒヤしていたが、湯神はイヤホンで何かを聴いているために聞こえないのか、気にしている素振りは全く無かった。
ちひろの家庭は転勤族だった。そのため、友達付き合いに消極的で、結果、人と関わるのが苦手になった。だから、悪名高い湯神にあえて関わることもない。そう思ったちひろだったが、駐輪場での親切な湯神を思い出すと、そんな気持ちも消え失せた。
しかしいざ話しかけた時の、湯神のばっさりとした否定と、終わることのない長々とした屁理屈は、ちひろに後悔の念を抱かせるのが常だった。
ある日、ちひろは上級生から野球部部室に呼び出される。それは、駐輪場から引っこ抜いた赤いステッカーの自転車の持ち主だった。その上級生は、自転車を駐輪場に停めていなかったことにより、反省文を書かされる羽目になったというのだ。そして、それはお前がやったのだから、お前が反省文を代わりに書けとちひろに言う。
そこに、湯神が現れる。彼もまた野球部であった。そしてちひろと上級生のやり取りを聞いた湯神は、上級生に詰め寄る。あの場所は二年生が駐輪する場所で、三年生が停める場所ではなく、ちひろが反省文を書く必要はないと。
一触即発の雰囲気だったが、湯神の尽きることのない屁理屈に上級生も折れたようだった。
何はともあれ、助けてもらったちひろは、
ありがとう!と湯神に伝える。しかし
この恩は忘れないよ。湯神くんが何か困った事があったらいつでも言ってね
いや、俺は困らないし。という言葉を残して湯神は去っていく。
別にあなたに何も望んでいないし。
そんな湯神に、ちひろは呆然とするのだった…。
あらすじ
湯神裕二は、野球部のエースで成績もよく、顔も悪くなかった。にもかかわらず、その極端に偏屈で理屈っぽく、自分の意見を曲げない性格から、クラスの女子に蛇蝎の如く嫌われていた。さらに、
俺は、友達とかそういうものを必要としない人間だという言葉の通りに同級生と接するため、男の友達でさえ皆無であった。しかし、趣味の落語への熱意と凝り性な性格により、一人きりでも完全に自己充足していたのだった。
綿貫ちひろは、そんな湯神のクラスに転校し、隣の席となる。転勤族の家庭ゆえに、もはや友達を作ることさえ面倒になっていたちひろだったが、今回は長期滞在となる予定だったので、友達を作って楽しく高校生活を送りたいと、ちひろは思っていた。
しかし二週間たっても、ちひろは一人で昼食を食べていた。学校に来ても、いろんな偶然で関わり合いのあった湯神と話すくらいが関の山だった。しかも、友達などいらないと言う湯神との会話は、何だかんだ言いくるめられた末、腹が立って終わるのが常であった。
しかし、いつの頃からか、自分がクラスで避けられていることに気づく。ちひろは、なかなか輪に入っていけないヘタレで、大人しく目立たない人間だったが、人当たりは良かったので、嫌われるような覚えは全く無かった。
しかしその理由は、面倒見のいいクラスメイト・久住若奈を通して明らかになる。それは、やけに湯神と話しているから、クラスの女子生徒たちに警戒されていたのだ。湯神と同類の人間ではないかと…。
感想
かなり酷いことをズケズケ言うし、こんな奴が近くにいたら厄介だなと思うけど、何故か憎めないのが湯神くんである。ちひろというキャラクターのヘタレっぷりは微笑ましいし、湯神を好きだったはずの梨緒の、湯神くんという人間を知った後の豹変ぶりもコミカルでよかった。
登場する人物の大体が、いっけん真剣に生活しているようにみえるけど、よくよく考えるとかなりぼんやりとしている感じがする。そんな、なにか『ちびまる子ちゃん』的世界観を醸し出している作品だなと思った。
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