はじおつ。 作者:卯花つかさ 掲載:まんがタイムきららフォワード 期間:2010-2014 巻数:全5巻 評価:★★★☆☆ Amazonで詳細を見る |
純真ながらもいじらしくもどかしい、高校生男女の初めてのお付き合いを描いた恋物語。
導入
わたしと…付き合って下さい !!橋の下の河川敷、女子高生の芦原向日葵は、よく知らない男子高生に告白していた
その告白は、断られるはずだった。しかしその男子高生は、承諾してしまうのだった…。
三日前、向日葵は常盤柊子と樫野やえと一緒に、芸能雑誌を見ながらおしゃべりをしていた。それは男性タレントの誰が演技がうまいとか、そういった他愛のない話だったが、向日葵はそんな話もできないほどに男が苦手だった。
それは、小中高と女子校だったこと、そして向日葵の膨らんだ妄想が男というものを得体の知れない存在にしてしまったゆえのことだった。
そんな向日葵をからかうのは、柊子とやえにはいつものことだった。しかし、今回のそれは度を越していた。柊子が誰かに告白してみようと言い出したのだ。
ところが、すぐに話は暗礁に乗り上げる。向日葵には男子の知り合いなどいなかったのだ。しかし、向日葵は顔見知りと言われ思い出す。通学路が同じ男子高生のことを…。
その男子高生は、向日葵が落としたキーホールダーを拾ってくれたのだ。それを向日葵は何も言わずにひったくって逃げたけれども…。
そして、ちょっとした度胸試しのつもりで向日葵は彼に告白し、断られるはずが想定外に付き合うことになってしまったのである。
この事態に女三人は、これからどうしようかと思い悩む。やえはなかったことにしようと言い、柊子はもう一回会って決めればいいと言う。
しかし二人は連絡先も交換していなかったのだ。向日葵は自分の気持ちが分からなかったし、どうすればいいのかもわからなかった。しかしこのまま、何もせずにはいられないとも思った。
そして結局、柊子の勧めで向日葵は告白した橋の下に行ってみることにしたのである。会えなかったら、付き合うのはなし。そして会えたら、そのまま付き合ってみることにして…。
放課後、向日葵は橋の下で男子高生を待った。しかしそのときも、来て欲しいのか…、来て欲しくないのか…、向日葵の心は揺れていた。
そして
もし彼がここに…来てくれたなら…と思う向日葵の前に、男子高生は現れたのであった…。
あらすじ
小中高と女子校だった女子高生の芦原向日葵は、とにかく男が苦手だった。男性店員のレジで物を買うのには勇気を振り絞る必要があったし、男性タレントの写真でさえ出来ることなら見たくはなかった。そんな向日葵が、ある男子高生に付き合って下さいと告白をすることとなる。それは友人の常盤柊子と樫野やえに、向日葵の男性恐怖症をからかわれたゆえのことで、ほんの度胸試しのつもりだった。
その男子高生・甲斐悟も、通学路が同じで向日葵のキーホールダーを拾ってもらったことがあるというだけの関わりしかなく、柊子ややえ、そして向日葵も断られると思っていた。
しかし、悟の方は向日葵のことが気になっていたのである。そして向日葵たちの想定とは異なり、付き合うこととなってしまうのであった…。
二人は初め、一緒に登校するところから交際を始める。しかし、向日葵は男性恐怖症であったし、悟も悟で男子校だった上に女子と関わったこともなく、また奥手であった。それゆえ、お互い何を話していいか分からず、無言のまま登校を終えることもしばしばであった。
そんな関係もメールのやり取りを通して少し進展し、二人は下校に一緒に帰る約束をする。それはまさに、放課後デートであった。
このときもまだ向日葵は、男性への苦手意識を直すためといった感覚があった。しかしこの放課後デートの帰り道、向日葵は悟に好きだと告白されるのである。
これをきっかけに、向日葵の心に罪悪感が芽生え始める。向日葵のあの日の告白は度胸試しのつもりだったと伝えるべきじゃないかと…。
しかし向日葵は伝えられないままに、悟との関係性を深めていく。向日葵は、悟の優しさに触れ、共にする時間を重ねれば重ねるほど、伝え難くなっていく自分の気持ちに気づく。
これを伝えてしまったら、もう悟と会えなくなってしまうのではないかと…。
感想
手を握るのにも一悶着し、アイスを分け合うだけで顔が真っ赤になり、最終回でやっとこさ軽量なキスにたどり着く、というプラトニックな恋愛漫画ですが、内容はいたって平凡です。しいて良さを挙げるなら、悟の服をつかんで顔を真っ赤にする向日葵がイイとか、悟と初めて手を握った時のうつむいて口を結んで赤面している向日葵が可愛いとか、キス顔の練習と称して目を閉じ、すこし口をすぼめた向日葵の表情がタマラナイとか………でしょうか。
また、序盤のシナリオにはイマイチな部分があります。
本作のオープニングでは、向日葵が悟に交際を申し込みます。そしてこの告白は、向日葵とその友人たちが、顔見知り程度の女子に告白されても承諾されるはずがないという前提で行われます。
しかし現実的には、交際を申し込むときに互いにパートナーがいない場合、申し込まれた側は互いのレベルを勘案して交際するか否かの判断を行います。
このように考えると、実は悟がえらくいい男で向日葵が悟に見劣りしているから、向日葵の告白に悟が承諾するはずがないと向日葵たちが思った、という残念な結論になってしまいます。
実際、漫画で描かれる女性が読者から見ていかに可愛く、美しかろうと、物語の世界では平凡な容姿を持つ登場人物として位置づけられていることはよくあります。
それと、『はじおつ。』つまり「はじめてのおつきあい」という本作の題により、向日葵の次のお付き合いを想定し、冷静になってしまうのは私だけでしょうか…。