ゴブリンスレイヤー 蝸牛くも 原作 黒瀬浩介 作画

ゴブリンスレイヤー
原作:蝸牛くも
作画:黒瀬浩介
キャラクター原案:神奈月昇
掲載:月刊ビックガンガン
期間:2016-
巻数:既刊2巻
評価:★★★★☆
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『ゴブリンスレイヤー』は、蝸牛くも作のファンタジー小説の黒瀬浩介によるコミカライズ。

最弱でありながら、最も数が多く、人間に最も被害をもたらすモンスター・ゴブリン。そのゴブリンのみを狩り続ける男を描いた、リアルなダークファンタジーストーリー。


あらすじ

剣と魔法のファンタジー世界。その住人たちは、金のため、名誉のため、そして冒険を求めて冒険者になる。彼らは、腕を磨きながら、冒険者ギルドで依頼を受け、それをこなし、報酬を受け取って暮らす。

そんな冒険者になろうと、成人してすぐに神殿を出た女神官は、冒険者として役に立ちたいとギルドに来ていた。

そこで女神官は、男剣士、女武闘家、女魔術師の3人の新人冒険者から成るパーティーに誘われ、ゴブリン退治へと向かった。

ゴブリン、それは単体では最も弱い怪物とされていたが、集団になると村を襲い女を攫うなどの被害をもたらす。


依頼のあったゴブリンは森の洞窟に巣食っており、4人はその洞窟へと入っていった。

しかしそこは、暗く構造も知れない洞窟。横穴を見落としたパーティーは、ゴブリンたちから背後を突かれ、たちまちのうちに崩れていった。

魔術師は、杖を奪われ、腹をナイフで刺された。彼女は魔術の学院を卒業した優秀な魔術師だったのもかかわらず。

剣士は、狭い洞窟でうまく剣を扱えず、足を刺され、囲まれ、そして滅多刺しにされた。冒険に憧れ、夢が叶ったばかりだというのに。

武闘家は、父から受け継いだ体術を駆使し、ゴブリンたちに挑んだ。しかし、見上げるほどの大きさの特殊個体に捕まり、ゴブリンたちに陵辱された。

後衛にいた神官は、魔術師をなんとか回復させようと癒やしをかけるも、何故か効かなかった。そして、次々とパーティーが犠牲になっていくのに恐怖し、呆然とし、そして失禁した。


そこに鉄兜で顔面を覆った男が突然現れる。そして男は、神官の周囲にいたゴブリンたちをたちまちのうちに狩り尽くした。

男は、ゴブリンスレイヤーと名乗った。

彼は、倒れていた魔術師の喉をナイフで刺し、息の根を止めた。それは、ゴブリンの糞尿で塗られたナイフで刺されたために、毒が回り、助かる見込みがないからであった。

洞窟のゴブリンたちはシャーマンに率いられた集団だった。シャーマンは、魔術を操るゴブリンで、新人冒険者よりも上手の呪文を使いだと男は言った。

二人は、ゴブリンを狩りながら慎重に奥に踏み込んだ。そこは広間で、近くの村から攫われたらしき幾人かの女と武闘家が陵辱されていた。そして人の骨でできた椅子に座るシャーマンの姿があった。

男は、油断することなく計画を立て、ゴブリンの動作を予測し、淡々と殺していった。そして、奥の部屋の子ゴブリンも含めて殺し尽くした。

ゴブリンはすぐに増え、人間への恨みを忘れない。それゆえに、目についたゴブリンは全て殺さねばならないと男は言った。


神官は知った。ゴブリンによって襲われた村の娘が攫われ犯されることも、油断した新人冒険者のパーティーがゴブリンによって全滅させられることも、ゴブリンの慰み者にされた女たちが神殿に入っていったことも、よくある話だと。

人の一生を破壊するほどに酷い、しかし、ありふれたこの出来事に、神官の信仰は揺らいでいた。しかし、だからこそ、神官はゴブリンスレイヤーと共に冒険者を続けようと思った…。



リアルなファンタジー世界のゴブリン

ゴブリン。それは、醜い邪悪な小人として様々なファンタジー作品に登場する。

ゴブリンは、単体では弱く、知能も人の子程度で、大人の人間であれば倒すことに苦労はしない。しかし、集団になると部族社会を作り、独自の原始的な言語を用い、連携して人間を襲う。

作品によっては、強力な個体として王(ゴブリンキング)や術者(ゴブリンシャーマン)などが登場する。


本作品におけるゴブリンもまた、同等の能力を持ったモンスターとして描かれているが、最弱であるがゆえに上級冒険者が相手にせず、数をすぐに増やして村々を襲い、惨劇を撒き散らす存在として登場する。

襲われた村は、食料を根こそぎ奪われ、男は殺され、女はゴブリンの巣に攫われる。攫われた女は、ゴブリンたちに犯され、最後には喰われてしまう。


この世界では必然とも思えるゴブリンスレイヤーの存在

主人公であるゴブリンスレイヤーは、そんな世界のゴブリンに壊滅させられた村の生き残りとして描かれる。

ゴブリンスレイヤーは、村が襲われたとき、姉が襲われ、嬲り者にされ、玩具にされ、殺されるのを見ながら、どうすることもできなかった。

その憎悪が、単なる村の青年をゴブリンの天敵に変えた。

彼は、武器を取り、自分を鍛え、如何にすればゴブリンを殺せるか考えた。失敗することもあったが、なんとか生き残り、成長し、ゴブリンを淡々と殺していった。

そしていつしか、ゴブリン退治専門の冒険者として上位冒険者となる。


そんな青年を主人公とする、ダークファンタジー寄りの世界観を持つ作品だが、その描写は極めて現実的で、もしゴブリンというものが存在すれば、本作品のように、人間に対する脅威は計り知れないだろうと思う。

そして、こんな世界ではゴブリンに憎悪を燃やし、ゴブリンを殺すことに全てを捧げるゴブリンスレイヤーの出現も必然のように思われるのだ。


最高レベルの作画

あいにく小説版を私は読んでないが、作画は緻密かつダイナミックでコミカライズとして最高レベルだ。

ファンタジー世界の描写は確立されてはいるが、本作で描かれる、華やかな街や長閑な村、おどろおどろしいモンスターの巣窟の描き分けは申し分ない。また、戦闘表現は現実的でありながらダイナミックで、キャラクターの描写も秀逸である。



小説版

ゴブリンスレイヤー
作者:蝸牛くも
イラスト:神奈月昇
出版:SBクリエイティブ
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